今回は、「洗浄剤で全身をくまなく洗わないことが大切」ということについて、触れてみたいと思います。 ~皮膚の「バリア機能」について~ 洗浄剤で顔や体を念入りに時間をかけて洗う方が多いと思うのですが、ほとんどの方が「乾燥性皮膚炎」もしくは その予備軍になっておられます。 日々の診療で、洗いすぎによる「乾燥性皮膚炎」の方を目にしない日は無いほどです。 「乾燥性皮膚炎」になると、どういう肌状態を引き起こすかと言いますと、 ①潤い成分を保管しておく角質部分が磨り減っていますので、保湿剤をつけてあげないと肌が突っ張ってしまいます。 ②細菌や真菌を寄せ付けない「バリア機能」が、ほころびを見せていますので、毛のう炎やニキビが出来易くなります。 ③角質部分が肌理というキメを形成しているのですが、肌理がざらついていると化粧のノリが悪くなります。 ④「バリア」機能は、皮膚全体の水分量の保持に役立っているので、ほころびが見られると水分保持が出来なくなり、 その結果、乾燥によるかゆみ・赤味・炎症が生じてきます。 →この状態で、保湿剤を塗ればイイじゃない?となると思いますが、「バリア機能」が傷ついた肌表面は抵抗力が無い上に、 保湿剤をはじめとした化粧品やクリニックで処方される軟膏類にもカブレ易くなります。 実は、全身を「洗い過ぎない」というテーマは、皮膚科のみならず美容的にも老化予防にも密接に関わってくるんですね。 当院では、「乾燥性皮膚炎」の患者さんひとりひとりに「なるべく全身を洗浄剤で隈なく洗わないで下さい!」と書いた、パンフレットをお渡しするようにしております。 今回のテーマは、非常に重要なテーマですので、今後何回かに分けて部位ごとに対策と考え方を詳述していければ と思っています。 それでは、また!
吹角 善隆 拝